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* 高井 研『生命はなぜ生まれたのか―地球生物の起源の謎に迫る』

日時: 2012/02/18(土) 16:10:58 メンテ
名前: tsunco

実に面白いご本に出会いました。
読み込むのに時間が掛かり、やっと先程アマゾンにレビューを送信致しました。
皆様に先行公開致します。
先日ご紹介した夏井先生は流石です。
既に立派なレビューを付けておられました(2012/2/1)。

『生命はなぜ生まれたのか―地球生物の起源の謎に迫る』 (幻冬舎新書) [単行本]
高井 研 (著)
http://www.amazon.co.jp/%E7%94%9F%E5%91%BD%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%9C%E7%94%9F%E3%81%BE%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%81%AE%E3%81%8B%E2%80%95%E5%9C%B0%E7%90%83%E7%94%9F%E7%89%A9%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%BA%90%E3%81%AE%E8%AC%8E%E3%81%AB%E8%BF%AB%E3%82%8B-%E5%B9%BB%E5%86%AC%E8%88%8E%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E9%AB%98%E4%BA%95-%E7%A0%94/dp/4344981987/ref=cm_pdp_srp_title_1

エネルギーから生命を理解せよ!ボケとツッコミ満載、最後まで笑えます。但し内容は超高度。, 2012/2/18

By tsunco "CR・IF" (近畿地方・時々首都圏・たまに国外)
(トップ500レビュアー)

レビュー対象商品: 生命はなぜ生まれたのか―地球生物の起源の謎に迫る (幻冬舎新書) (単行本)

筆者は海洋研究開発機構(JAMSTEC)に所属する新進気鋭の超有望研究者。
京都人(1969年生まれ、京大農卒)らしい実にはんなりした、洒落の効いた文章を楽しめるご本である。
吉本風のボケとツッコミ、ダジャレ、はたまた一人漫才。
また喩えが絶妙秀逸で、最後まで笑えるのである。
笑って笑って笑い転げた小生の寿命はこれでまた延びたであろう(笑)。

但し、その内容の凄い事。
高校で物理・化学と生物と地学を履修した、ではまず厳しい。
大学理科系出身でも苦しいかな。
これほど文体と内容に格差があるご本も珍しい。
このご本のテーマは「生命はこの地球のどこでどのように誕生したのか?」
エッセンスは92pの以下の言葉に集約されている。
・生命の定義?あんまり最近は気にしていない。
・生命を個々の生命で考えた事はない。
・生命を取り囲み、生命を育んだ環境(生命圏)の在り方やその中のエネルギーとか物質の流れがむしろ重要。
・ずっと続いた生命の繋がりこそ心が揺さぶれれる。
そして「生命圏に於けるエネルギー論」で生命を捉えるべし、と言い切る作者。
だから地球以外の惑星にも生命は間違いなく普遍的に存在すると筆者は頑なに信じているのである。
折も折、地球型惑星(水が液体で存在し得る星)の発見が相次いで報道されている。
ここも実にタイムリーで嬉しくなってしまう(笑)。

「RNAワールド説」など現在の定説に囚われないところも、まるで自分を見ているようで嬉しくなってしまった。
まずは常識を疑え。
教科書に書いてある事は嘘ばかり。
大いなるパラダイムシフト万歳!!。
実に素晴らしい。
ズバリ、我々の共通先祖さまは深海熱水活動域の超好熱性メタン生成古細菌。
で、結局はハイパースライム仮説・ウルトラエッチキューブリンケ−ジ仮説の提唱に至る。
その内容は読んでのお楽しみ。

40億年前に誕生したご先祖さまは凡そ20億年前に「オオカカさま」ミトコンドリアを得て真核生物に進化した。
そして6億年前に多細胞化し、「先カンブリアの大爆発」に至る。
筆者はこの「地球と生命の渾然一体となった進化過程」を一つ一つをスナップショットではなく、
あたかも映画の様に流れるストーリーとして解き明かしたいと意気込んでいる(234p)。
最新の科学と関西風お笑いが同時に楽しめる逸品である。
この際、大島泰郎氏の『生命は熱水から始まった』も同時に読みたい。
星は勿論5つ。
お笑い大好きな理科系諸氏の皆様にお勧めする。


高井 研
1969年、京都府生まれ。
地球生物学者や宇宙生物学者と名乗ることが多い。
専門は、深海や地殻内といった地球の極限環境に生息する微生物や生物の生理・生態や、その生態系の成り立ちと仕組みの解明。
97年京都大学大学院農学研究科水産学専攻博士課程修了。
日本学術振興会特別研究員、科学技術振興事業団科学技術特別研究員などを経て、2009年より、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)海洋・極限環境生物圏領域深海・地殻内生命圏研究プログラムプログラムディレクター及び、プレカンブリアンエコシステムラボラトリーユニットリーダー



実は高井先生の件では2007年にNHKでTV番組になっております。

NHK『爆笑問題のニッポンの教養』
FILE017:「深海に40億年前の世界を見た!」2007年11月13日放送
http://www.nhk.or.jp/bakumon/previous/20071113.html
>高井研(地球微生物学)地球最後の秘境といわれる深海。
40億年前、地球上の全ての生命体が深海で生まれたと言われている。それはどのような生命か、どのようにして生まれたのか、これは今の科学でも大きな謎だ。その謎に世界で最も近づいている研究者が、高井研。
高井の専門は地球微生物学。地質学、微生物学、化学などあらゆる分野にまたがって生命の起源を探求していく学問だ。自らも深海6000メートルの世界に潜る高井はついに、40億年前の地球の痕跡を残す場所をインド洋の深海で発見。そこは光も届かなく、酸素もない極限環境だった。そしてその場所に住む生命体をも高井は見つけ出した。40億年前に誕生したわれわれ生命体の祖先ともいえるその生物とは?
独立行政法人海洋研究開発機構のホームページはこちら。
http://www.jamstec.go.jp/j/ (NHKサイトを離れます)
爆笑問題の対戦感想田中:いやあ、今日はなんだかうるさかったですね。高井さんもなかなかね、面白い人でしたね。ちょっと芸人さんっぽいっていうかね。まあ微生物の話も面白かったんですけど、結局後半の激論がほとんど印象に残る感じになりましたね。真ん中で挟まれて、どうしていいか分からなくなりますけどね、ああいう時って・・・。
太田:うーん、面白かったです。何言っているんだかよく分からなかったけど。まあどうなんですかね。あそこまで目くじら立てることでもないかなって・・・。
田中:え?それにしては、かなりな感じだったけどね。
太田:俺はね、何に対してもそうなんだけど、不思議がいっぱいになっちゃうと「どうして?どうして?」気になって、ああなっちゃうだけなのね。
田中:その性格、昔から変わらないよね。
大田:一緒じゃない?まあ、そういう考え方もあるなあっていうのが、一つわかりましたけどね。なぜこの人はそう考えるのかって。で、またそこからまた始まるわけですよね。
今回、番組史上もっとも激しい?議論が行われました。取材の時から、高井さんは、自らの研究に対して自信と愛情にあふれた人で、どんな些細な話でも適当には流せないタイプだとは思っていたのですが・・・。番組では時間の関係で、そのすべてはご紹介できませんでしたが、激しい科学談義が20分も続きました。さらにロケ終了後にも20分・・・。高井さんも爆笑問題さんも最後まで自説を変えず、非常にエキサイティングな一時でした。
 その後、番組の編集中、高井さんは電話で「今回の収録を機に、自分も大人にならなければ・・・反省しています」と。いえいえ、ある意味大人だからこそ熱くなる議論・・・。
その情熱、視聴者のみなさんにも伝わったのでは・・・?
プロデューサーの編集後記 
異質なもの同士の衝突こそ、新たな展開を生む。その衝突の化学反応こそが、あらゆるエネルギーの源泉である・・・。
 今回は、このテーゼが、前半戦で生物の起源において証明され、後半戦で、真摯な方同士の舌戦?において証明された、といった趣きで、実り多い回でした。「後半戦」の科学をめぐる高井さんと太田さんのやりとりは、時に言葉尻に引っかかった言い合いをご愛嬌としながらも、「科学」というものに対するスタンスを問い直す、本質的なものだったと思います。太田さんの「物言い」から逃げることなく応じてくださった高井さんに、あらためて感謝申し上げ、敬意を表します。
 科学を、普遍的な時代を超越した「客観的な学」とするか、ある種の時代的文脈から逃れ得ない「エッセイ」と捉えるか・・・、そのことの「真偽」はこの番組で毎回考えざるを得ないテーマで、それはさておき、今回私がしみじみ感じたのは、やはり、真摯に本質に辿り着こうとする者同士は、まったくジャンルは異なり表層に現れるものは寧ろ反発しあいながも、その底の部分では通じ合うものがある、という事実でした。田中さんが「お前たち、一緒に飲みにいけよ!」と言った気持ち、よくわかります。
 とはいえ、高井さんと太田さん、似た者同士・・・などと口にしたら、またこれはこれで「どこが似てるんだよ!」と両サイドから言い返されてしまいそうですけれども、ね。前々回の齊藤環さんのお話の延長上にありそうな話ですが、言葉を持ってしまった人間は、その言葉ゆえに誤解も生む。「似た者同士」が言葉を重ねれば重ねるほど誤解を生む・・・。そこに皮肉を感じます。もちろん、それでもそれを乗り越えていけばさらに分かり合う時が来るわけなんですが・・・。
 もう、言葉を得てしまった以上、とことん語り合いましょう。毎週。
そんな気持ちで真摯なやりとりをお送りしているつもりです。毎週。

そしてこの番組は後に本にもなっています。

『爆笑問題のニッポンの教養 深海に四〇億年前の世界を見た! 地球微生物学』 (爆笑問題のニッポンの教養 17) [新書]
高井 研 (著), 太田 光 (著)
http://www.amazon.co.jp/%E7%88%86%E7%AC%91%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%81%AE%E3%83%8B%E3%83%83%E3%83%9D%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%95%99%E9%A4%8A-%E6%B7%B1%E6%B5%B7%E3%81%AB%E5%9B%9B%E3%80%87%E5%84%84%E5%B9%B4%E5%89%8D%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%82%92%E8%A6%8B%E3%81%9F-%E5%9C%B0%E7%90%83%E5%BE%AE%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6-17/dp/4062826127

また昨年にはもう一つこんな番組もございました。

『NHKサイエンスZERO 深海で生命の起源を探る』(2011/1/15)
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp332.html
>地球最古の生命体と豊富な鉱物資源が存在するとして注目される「深海熱水噴出孔」。去年9月、日本が誇る最新掘削船「ちきゅう」が世界で初めて熱水噴出孔の源流を掘削調査。生命の起源につながる微生物発見と、世界の資源問題を解決する可能性のある鉱物資源の探査に挑んだ。さらに深海探査機「ハイパードルフィン」は深海生物の捕獲に成功。沖縄の近海で行われた調査を密着取材し、深海熱水噴出孔探査の最新成果に迫る。
JAMSTEC(海洋研究開発機構)では、深海で暮らす様々な生物の研究が行われている。特に熱水噴出孔の周りでは新種の生物が次々と発見され、そのユニークな生態が明らかにされている。例えばムール貝の仲間であるシンカイヒバリガイは、人間にとっては有害な硫化水素をえさに生きている。エラに共生している微生物が硫化水素をエネルギー源として栄養を作り出し、その栄養を吸収して生きているのである。
去年9月、沖縄の伊平屋北海域で無人探査機「ハイパードルフィン」による熱水噴出孔周辺の生物調査が行われた。JAMSTEC研究員・和辻智郎さんのねらいはゴエモンコシオリエビの捕獲。ゴエモンコシオリエビは、胸の体毛に住み着いている微生物を食べる珍しい生物で、これまで生きたままの捕獲にはほとんど成功していない。和辻さんは、温度や水圧を調整しながら捕獲ボックスを引き上げるなど、様々工夫の末にゴエモンコシオリエビの捕獲に成功した。
「ハイパードルフィン」の調査と同時に、日本が誇る最新鋭の掘削船「ちきゅう」による海底掘削調査も行われた。超合金で出来たドリルで海底を掘り進めながら地層サンプルを回収し、海底化にすむ未知の生命体を調べるのが目的だ。パイプが折れる事故が発生するなど、困難が続く中で地層サンプルの回収に成功。ここに未知の微生物が含まれているかどうか、調査が続けらられている。またサンプルからは、銅や亜鉛、鉛、銀、さらにはレアメタルを含む可能性が高い鉱物資源が発見され、資源探査への重要な足がかりとなった。

もちろんこちらの番組もご本になっております。

『NHKサイエンスZERO 深海で生命の起源を探る』 (NHKサイエンスZERO) [単行本(ソフトカバー)]
NHK「サイエンスZERO」取材班 (その他), 高井 研 (その他), JAMSTEC (その他)
http://www.amazon.co.jp/%EF%BC%AE%EF%BC%A8%EF%BC%AB%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B9%EF%BC%BA%EF%BC%A5%EF%BC%B2%EF%BC%AF-%E6%B7%B1%E6%B5%B7%E3%81%A7%E7%94%9F%E5%91%BD%E3%81%AE%E8%B5%B7%E6%BA%90%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%82%8B-NHK%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B9ZERO-%EF%BC%AE%EF%BC%A8%EF%BC%AB%E3%80%8C%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B9%EF%BC%BA%EF%BC%A5%EF%BC%B2%EF%BC%AF%E3%80%8D%E5%8F%96%E6%9D%90%E7%8F%AD/dp/4140815078/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1329544807&sr=8-1

最後に夏井先生の凄いレビューです。
当然3つ星でございます。

『生命はなぜ生まれたのか―地球生物の起源の謎に迫る』★★★ (幻冬舎新書)
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一般向けの科学書は大きく二つに分かれる。サイエンス・ライターが書いた本と研究者が一般向けに書いた本だが,それぞれに長所,欠点がある。前者は読みやすく関連する分野が過不足なく取り上げられているが,まだ決着が付いていない分野については両論併記になるのが普通だ。一方,後者の著者は原則的に論文の書き手であって読み物系の文章を書くのは得意ではないが,自分の専門については「世界的にはこちらの説を指示する専門家が多いが,自分はこれは間違っていると考えている。理由は・・・」という具合に著者の考えがストレートに書かれていることが多い。また,最先端の研究分野に触れられるのも後者の本の魅力だ。
本書は深海熱水活動域研究の最前線に立つ研究者であり,その専門分野の研究を紹介したのが本書である。つまり後者のタイプの書き手だ。普通なら文章が下手だろうと考えてしまうが,本書の著者は明快で軽妙洒脱な文体を自在に操っているのである。名文家タイプではないが,「関西人のノリ」(ちなみに著者は京都生まれ)で最後まで読み手を惹きつける文章が書ける人なのだ。研究者の文章としてはかなり異質であるが,「一人ツッコミ,一人ボケ」までしていてノリノリの文体は読んでいて楽しい。
そういう軽い文体だが,内容はかなりハードで高度である。多分,「高校の化学,生物学なら全て知っている」程度では歯が立たない部分が結構あると思う。つまり,オチャラケ文体という羊の皮を被った狼である。
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そして内容が輪をかけて面白い。今日主流となっている「原初の地球での生命誕生のプロセス」について,ことごとく否定しているのだ。つまり,「地球における最初の生命体は深海底の比較的低温の熱水活動域で生まれた」という定説も,「DNA誕生の前にRNAだけで遺伝子複写をしていた "RNAワールド" があった」という定説も,本書の筆者はそのどちらも間違っていると主張し,極めて強固な論理で自信満々に一刀両断して自説を展開するのだ。そのさまは読んでいて爽快ですらある。
なぜ著者は自信満々に「定説」を否定できるのか。それは実際の海底熱水活動域を世界の誰より見てきて,誰よりもよく知っているという自信と自負があるからだ。やはり,現場を知っているものが一番強いのである。現実を知らない人間が頭でこねくり回して作った理論と現場を知った上で作り上げた理論では,背景がまるで違うし,いわば背負っているものが違うのだ。地に足がついていて自由に想像の翼を広げるのと,最初から宙に浮いているだけの空論は別物なのである。
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これまで本サイトでは生命誕生に関する本をいくつか紹介してきたが,本書の著者のスタンスが他の類書と全く違うのは次の2点である。
個々の生命でなく,生命体が持続できる環境と渾然一体としたものとして生命体を捉えている点
物質でなく「エネルギー」を中心にしている点
これが最もよく表れているのは「第3章 生命発生以前の化学進化過程」である。ここで著者は「生命の定義は気にしていない。生命が生命のみで存在することはあり得ない。生命を取り囲み,生命を含んだ環境のあり方やその中のエネルギーや物質の流れの方がもっと重要ではないか」という文章からも明らかだ。要するに,原始の地球で誕生した生命体が生き延びるためには,何とかして外部(=環境)からエネルギーを得るしかないのだ。しかも,そのエネルギー源は持続的に提供されるものでなければいけない(原初の生命体がエネルギー源を求めて自由に動き回ったとは考えられないから)。すなわち,環境から持続的にエネルギーを作り出せなければ,誕生した生命体はすぐに死滅してしまったはずだ。つまり,生命体は環境と表裏一体であり不可分なのである。生命の起源について述べた説は多数あるが,環境との関係をここまで問い詰めたものはなかったと思う。このあたりは,深海熱水活動域といういわば極限状態を生存域とする生物を誰よりも知る筆者ならではの視点だろうと思う。
原初の生命体のエネルギー源は原始有機物発酵だったと考えられているが,この生命体は周囲の有機物を消費し尽くした時点で死滅していった(その意味で,35億年前の太古の深海熱水活動域では生命が新たに生まれてはすぐに死んでいったと,筆者は述べている)。いわば「一発屋生命」だ。しかしその一発屋の中で,硫化鉱物表面での原始代謝(水素資化性メタン生成など)を取り込んだ生命体が出現し,深海熱水活動域から持続的に供給される水素をエネルギー源とする生命集合体が出現した,というのが本書の考えるストーリーである。そして,40億年前の原始海水の化学組成と,当時の海洋地殻の構造と構成から,実際に水素が持続的に発生することを実験室レベルで証明していくのだ。その考察過程はきわめて論理的でありスリリングですらある。
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本書は筆者の研究の最前線を伝えるものだが,文章は前述のように「関西人のノリ」そのままで非常にわかりやすく,何より比喩が秀逸だ。例えば,「エネルギーをATPに換える3つの方法」という部分で,「発酵は物々交換。呼吸と光合成は基本使用は同じだが金融業のノウハウが入る。TCA回路はいわば“ロンダリング”であり,電子伝達系は資産運用部だ」という比喩は,エネルギー代謝の本質を突いていて見事だと思う。何より具体的イメージが読者にきちんと伝わるではないか。意表を突く比喩で本質を伝える技術は,一般向けの本を書く科学者に必須の才能だと思うが,これはまさにそのよい例だと思う。
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地球における最初の生命体がどのように誕生したのか,という地球最大の謎に興味を持っている人なら,是非読んでみるべき良書だと思う。何より,新たな知の地平を切り開こうとする研究者の気迫が,これから科学を目指そうと考えている若い読者にとっては何より刺激になるだろう。

おまけ
 
Page: [1]
* 熱水鉱床に孔を掘ったら瞬く間にチムニーが出来た! ( No.1 )
日時: 2012/03/27(火) 07:15:44 メンテ
名前: tsunco

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先程、皆様のNOKでやってました。
ご紹介します。
『画期的な鉱物資源回収の道』
実に素晴らしい。
我が国が「資源大国」に変身するかも知れませんね。

JAMSTEC、海底資源回収に向けた「人工熱水噴出孔」に関する基礎研究を開始
http://news.mynavi.jp/news/2012/03/27/004/
>海洋研究開発機構(JAMSTEC)海底資源研究プロジェクトは、2010年9月に行われた地球深部探査船「ちきゅう」による統合国際深海掘削計画(IODP)第331次研究航海(沖縄熱水海底下生命圏掘削シーズン1)で創出した「伊平屋北」熱水活動域における複数の「人工熱水噴出孔」について、熱水噴出パターンの変動や熱水化学組成の調査・観測を1年以上にわたり継続してそれらについて明らかにしたと発表した。また併せて、海底熱水を持続可能な資源として活用する基盤技術の研究開発を図るため、人工熱水噴出孔に新たに形成されたチムニーの形成様式、組成分析を行ったことも発表されている。
成果は、底資源研究プロジェクト熱水システム研究チーム 海洋・極限環境生物圏領域 深海・地殻内生物圏プログラム システム地球ラボ プレカンブリアンエコシステムラボユニットの高井研上席研究員らの研究チームによるもの。
日本は狭い国土ながら、450万km2弱という世界第6位の広大な「排他的経済水域(EEZ)」(国連海洋法条約に基づいた、自国の沿岸から200海里(1海里=1852m)までの経済的な主権がおよぶ水域)を持っている。この広大なEEZ内に眠る海底資源を活かすことは、日本のさらなる経済成長を支えるのみならず、人類の持続可能な発展のために重要だ。
熱水噴出域には、銅や亜鉛、鉛、金、銀などを含む硫化物が沈積してできた煙突状の「チムニー」が形成されており、その硫化物沈殿物の規模が大きくかつ含有される有用金属の品位が高いものは熱水鉱床と呼ばれ、重要な海底資源の1つとして注目されている。しかし、深海底に形成されることから容易には採掘・回収できないなどの問題があり、そのための技術開発が期待されている状況だ。
研究チームでは、2010年9月に行われた地球深部探査船「ちきゅう」によるIODP第331次研究航海において、沖縄本島の北西150kmの中部沖縄トラフの水深1000mに存在する深海底熱水活動域「伊平屋(いへや)北フィールド」(画像1)に作った人工熱水噴出孔4地点(画像2)について、熱水噴出パターンの変動、熱水化学組成について継続的に観測を行い、人工熱水噴出孔に新たに形成されたチムニーの形成様式、組成分析を行ってきた。
画像1。IODP第331次研究航海の調査海域図(伊平屋北フィールド)
なお、伊平屋北フィールドの海底下では、「キャップロック構造」(水を通さない岩石が、伏せたお椀のように堆積物を覆い、それが層になっている構造)が複数存在する。そして、熱水が熱水滞留帯の広大かつ深くまで達しており、熱水は蒸気を多く含む軽いものが上部に分布し、塩分を多く含む重い熱水が下部に存在していることが確認済みだ。
画像2。IODP第331次研究航海で設置した人工熱水噴出孔(4地点)の位置関係
調査の結果判明したことは、いくつか存在する。その1つが、時間経過に伴う熱水組成の変化だ。4カ所の人工熱水噴出孔は、掘削直後(2010年9月)、数日の間黒味を帯びた熱水を噴出しており、比較的早い時期に黒味がないクリアスモーカーになった(掘削から約4カ月後の2011年2月)。また、2011年2月に人工熱水孔から噴出する熱水を採取してその化学組成を調べたところ、掘削前の自然熱水孔の熱水に比べて、蒸気(気相)分に乏しい熱水に変化していることが判明している。
2つ目は、人工熱水孔においてチムニーが短期間で急速に成長することだ。伊平屋北熱水活動域の活動中心である「North Big Chimney」と呼ばれる高さ20mを超える熱水マウンドの頂部に創出された人口熱水噴出孔(画像2のC0016B)に、2011年2月には6mを超えるチムニーが新たに形成されていることが発見された。
この航海において採取を試みたがうまくいかず、チムニーは崩壊してしまったが、半年後の2011年8月から9月にかけて行われた航海では、この崩壊したチムニーが8mを超えるほどに再成長していることが確認されたのである。このことは、人工熱水孔におけるチムニーは短期間で急速に成長することを示しているというわけだ。
3つ目は、海底下熱水溜まりでの熱水化学組成の違いとチムニー鉱物組成が関係する点について。IODP第331次研究航海で創出した2つの人工熱水孔(画像2のC0016B、C0013E)では、形成されたチムニーの採取に成功し、成分の分析が行われた。
C0016B孔における人工熱水噴出孔チムニーは、「閃亜鉛鉱(ZnS)」(せんあえんこう:亜鉛の硫化鉱物)、「ウルツ鉱」(閃亜鉛鉱と組成が同じという亜鉛の硫化鉱物だが、結晶系が異なり、閃亜鉛鉱が等軸晶系なのに対し、ウルツ鉱は六方晶系)、「方鉛鉱(PbS)」(ほうえんこう:硫化鉱物の1種で、日本で産出量の多い)、「黄銅鉱(CuFeS2)」(おうどうこう:銅の硫化鉱物の1種)が主成分である。
それに対し、C0013E孔のチムニーは、「硬石膏(CaSO2)」(こうせっこう:硫酸カルシウムが主成分の硫酸塩鉱物の1種)を主成分として、黄銅鉱・閃亜鉛鉱・方鉛鉱・ウルツ鉱も含有する組成であることが確かめられた(画像3・4)。このような鉱物組成の相違から、前者はほぼ成熟した「黒鉱」(くろこう)に相当するチムニーであり、後者は黒鉱への成長前段階にあるチムニーといえる。
画像3(左)は採取した人工熱水噴出孔チムニー。画像4はその顕微鏡画像。閃亜鉛鉱、黄道鉱、方鉛鉱、ウルツ鉱などが含まれることが判明した。
ちなみに黒鉱とは、閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄銅鉱といった硫化鉱物を豊富に含む、海底火山活動で生成した黒色の混合鉱石。中央海嶺などの現在活動中の海底熱水活動域のチムニーなどには、主に黄銅鉱(CuFeS2)を主成分とする硫化鉱物が卓越しているのに対し、日本周辺の海底熱水活動域にはこの黒鉱組成とよく似た硫化鉱物チムニーが産出することが多い。
黒鉱型鉱床は日本では東北地方、特に秋田県北部に多く分布しており、中新世の日本海の拡大に伴う大規模な海底火山活動によって生成されたと考えられている。
黒鉱型鉱床の周辺では、黒鉱に伴って、黄鉄鉱(FeS2)・黄銅鉱を主成分とする「黄鉱」、重晶石(BaSO4)を主成分とする「重晶石鉱」(じゅうしょうせきこう:硫酸バリウムからなる鉱物)、「石膏」(CaSO4・2H2O)・硬石膏を主成分とする「石膏鉱」などが産出し、これらの鉱石は熱水から析出した鉱物構成の違いを反映している形だ。
掘削コア試料の解析においても、C0016B孔では海底下より黒鉱塊が得られているのに対し、C0013E孔では脈状の硫化鉱物のみが存在するという違いが認められている。
つまり、海底下熱水溜まりの中で大規模な黒鉱を産出するポテンシャルに富んだ熱水が存在する部分から由来する人工熱水噴出孔では、海底面で著しく黒鉱鉱物成分に富んだチムニーが容易に形成されるのに対し、海底下熱水溜まりの中で沸騰により蒸気相が卓越した熱水が分離し濃集した部分から由来する人工熱水孔では、天然熱水噴出孔で形成されるものと同じようなチムニーが形成されることが明らかになった。
4つ目は、持続的な鉱物資源回収の可能性についてだ。2つ目、3つ目の成果から、海底掘削により鉱床形成ポテンシャルが大きい海底下熱水を直接海底に噴出させる人工熱水噴出孔を作り、回収装置を設置し、一定期間硫化金属鉱物を沈殿・成長させ、回収するというアイデアを見出し、特許を出願した。
この成果は、開発リスクが高いと考えられてきた海底熱水鉱床開発において、「取る海底資源から育てる海底資源へ」という、発想の転換を図る新しい海底資源開発手法となる可能性があるとしている。
今回の研究は、人工熱水噴出孔という海底下の世界を覗き見る窓を通して、海底下の熱水溜まりの物理・化学的性質に空間的・時間的な不均質性が存在しており、その熱水の不均質性が海底面でのチムニー形成を支配していることを明らかにした。これは、海底熱水における鉱物形成や鉱床成因論を解明する上で極めて重要だ。
そして。今回の成果に対して研究グループは、黒鉱を形成するポテンシャルの高い海底下熱水溜まりを掘削し人工熱水噴出孔を創り出すことによって海底面での黒鉱養殖・回収を行うといった、極めて低いコストや環境負荷を実現可能とする、画期的な鉱物資源回収の道を切り開く可能性があるとコメントしている。

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横軸の値 例:2009,2010,2011,2012
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